エンジニアリング

【プラント機器】Motor Service Factorについて解説!

2022-07-22

困っている人

Motor Service Factorというものがあるみたいだけど、その定義や意味か知りたい!

Safety Factorとの違いも合わせて知りたい!

こんなお悩みを解決します。

この記事を読んで解決できること

  • Motor Service Factorとは何か
  • Motor Service FactorとSafety Factorはどう違うか
  • Motor Service Factorを守らないとどうなるか

今回はポンプをはじめとする機械の運転に欠かせない、モーターに関するMotor Service Factorについて解説します。

本記事を読んで、ぜひ今後のプラントエンジニアリングに活かしていただければ幸いです!!

Motor Service Factorとは

Motor Service Factor (サービスファクター、S.F.) という言葉を聞いたことがありますか?

経験豊富なベテランエンジニアの方へ質問しても、このように答えられるかもしれません。

ベテランエンジニア

「モーターのS.F.って、いわゆる安全率みたいなものと考えればいいよ」

実は、Motor Service Factorはその言葉が定義されているんです。

Motor Service Factorは誰が定義した

アメリカ電気工業規格会National Electrical Manufacturers Association、NEMA・ネマと読みます)という団体が、その定義について定めています。

Motor Service Factorの定義とは

NEMAが発行するANSI/NEMA MG-1にはこのように定義されています

...A multiplier which, when applied to rated power, indicates a permissible power loading that may be carried under the conditions specified for the service factor....

引用元: NEMA MEG-1

「定格出力に適用された際に、S.F.により定められた条件の下で伝達される許容される出力を示す乗数」と解釈できます。

困っている人

どういう意味かよくわからないよ・・・

具体例を挙げて説明しましょう。

とむ

S.F.が1.15と仮定します。

そして、モーター定格出力が10kWと仮定します。計算すると、

10kW x 1.15 = 11.5 kW となります。

つまり、10kWの定格に対してSFが1.15であれば、11.5kWまでがNEMA上における、SFに対する許容値と解釈できます。これだけです。

Safety Factor(安全率)との違いは?

困っている人

うーん、やっぱり安全率と同じことを言っているように思えるのだけど。。

それでは安全率の定義も確認してみましょう。

とむ

安全率(Safety Factor, Factor of Safetyともいわれます)について、Wikipediaに以下の通りその定義が記載されています。

安全率(あんぜんりつ)とは、あるシステムが破壊または正常に作動しなくなる最小の負荷と、予測されるシステムへの最大の負荷との比(前者/後者)のことである。

(中略)例えば、10kgf の荷物を置くための棚について、荷物を置くときの動作の勢いや、棚の上で荷物が偏った置き方をされる場合などを考えると、実際には10 kgf以上の荷重に耐えられるように設計しなければならないことは明白である。具体的には「耐荷重量: 100 kgf(安全率 2.5)」のように用いる。この場合、安全を保証出来る仕様上の耐荷重は100 kgfまでであるが、設計的な実力としては250 kgfまでは耐えられるという意味である。

引用元: Wikipedia

SFとSafety Factorの違いが分かりましたでしょうか。簡単に以下に纏めます。

Service Factor: 定格値に対する許容される乗数、定格以上の負荷で使うことを認めている
Safety Factor: 定格値に対する余裕を示す乗数、定格より大きい負荷で使うことは基本的には考えられていない

困っている人

なるほど、S.F.に示された係数 x 定格出力までなら、いつも使えると考えていいんだね!

いえ、実は大きな注意点があるんです。

とむ

Service FactorでMotorを運転し続けてはいけない理由

確かに、NEMAでは(定格出力)x(S.F.で定められた乗数)の範囲内でモーターが運用されることを許容しています。

一方で、NEMA MEG-1には以下の記載もあります。

...A motor operating continuously at any service factor greater than 1.0 will have a reduced life expectancy as compared to operating at its rated nameplate horsepower. Insulation life and bearing life can be reduced by the service factor load....

引用元: NEMA MEG-1

「1.0を超えるS.F.で連続的に運転されるモーターは銘板に記載の定格出力における運転と比べて運転寿命が短くなる。SF負荷での運転により、絶縁の寿命やベアリングの寿命を縮めうるかもしれない。」

SF下での運転は過負荷とも言える

なぜSF負荷での運転が寿命を縮めるのでしょうか。それは、以下のように考えるとわかりやすいと思います。

許容されているとはいえ、SF1.0を超える範囲で運転を行うことはそのモーターにとっては過負荷で運転している状態と同じと言えます。

過負荷で運転しているということは通常の運転に比べて電流も多く流れている状態であり、それに伴う振動、騒音、熱といったエネルギーへの変換分も上昇することにつながります。

この中で、熱による温度上昇がモーターの運転寿命を大きく縮めうる要因となるのです

温度上昇がモーター寿命を短くしうる

温度が寿命に影響を与える例として、アレニウスの法則(10℃2倍則)をご存じでしょうか。

アレニウスの法則は、スウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウスが1884年に提出した、ある温度での化学反応の速度を予測する式です。

一般には、ある温度における寿命に対し、温度を10度上げるとその寿命は半分になることで知られていると思います。(ここでは詳細は割愛します)

引用元 : TDK TECH-MAG

上記はコンデンサの例ですが、モーターに用いられる絶縁材やベアリングにも同様のことが言えるのかと思います。

適切に設計されたモーター定格出力で運転するのが一番ですね。

とむ

まとめ

本記事では、Motor Service Factor(S.F.)について解説しました。

ポイント

  • Motor Service FactorとはNEMAによって定義された、定格出力に対して運転が許容される乗数のこと。
  • (定格出力)×(乗数)の範囲であれば、規格上は運用してもOK。
  • 実際には過負荷での運転・温度上昇につながり、運転寿命が縮む可能性が高くなる。そのため可能な限り定格以内で運転できるよう設計する。

正しい知識を身につけて、エンジニアとしてスキルアップしていきましょう!

とむ

40代 x 2児のパパ・サラリーマン | メーカーでプラント設計(10年以上) | プラント設計に関する情報のほか、仕事・日々の暮らしで役に立つ、実際に使って良かったガジェット・商品について情報発信中

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